抄録
ローレンス・ブロック作の探偵小説「マット・スカダー」シリーズを用いて,アルコール依存症者が連続飲酒に陥っていく状況や,飲酒による様々な問題を否認する心理,意識喪失を起こし解毒治療に運ばれた場面,アルコール依存症であることを認めた段階を明らかにした。さらに,AAの集会に参加し,スポンサーの援助で危機を乗り越え回復していく過程を抽出し,同時に回復状況を作風の変化からも明らかにした。また,小説のなかで示されたアメリカにおけるアルコール依存症者に対する支援システムを日本の医療や,セルフヘルプグループなどの支援制度とを比較検討した。