東京保健科学学会誌
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訪問看護における倫理的課題
習田 明裕志自岐 康子川村 佐和子恵美須 文枝杉本 正子尾崎 章子勝野 とわ子金 壽子城生 弘美宮崎 和加子
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2002 年 5 巻 3 号 p. 144-151

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抄録

訪問看護における倫理的課題を明らかにするために,訪問看護ステーションに所属する訪問看護師300人を対象に,倫理的課題の経験や悩みの有無に関する自己記入式質問紙調査を行った。114人から回答が得られ,以下のことが明らかになった。1.倫理的課題に関する質問19項目のうち,50%以上の者が経験していた課題が10項目あった。2.倫理的課題を経験した場合,その課題に関する悩みの有無については,19項目中18項目について70%以上の者が悩んでいた。3.5つにカテゴリー化した倫理的課題の分類の中で,<利用者の意向と看護職者の意向が食い違うため看護職者が悩む状況>,<利用者の意向と家族の意向が食い違うため看護職者が悩む状況>において,倫理的課題を経験している者が多かった。しかし悩みの有無に関してはカテゴリー間で大きな差はみられず,いずれのカテゴリーにおいても倫理的課題に対し多くの者が悩んでいた。以上の結果から,訪問看護活動において看護職者はしばしば倫理的課題に遭遇しており,それに対し多くの看護者が悩み(ジレンマ)を抱いていることが明らかになった。訪問看護職者個々人が倫理的な判断能力を向上させる一方,倫理的課題への組織的な取り組みなどの対応策が必要であることが示唆された。

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2002 日本保健科学学会
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