2003 年 5 巻 4 号 p. 217-224
本研究の目的は,老人病院で抑制(身体拘束)されていた高齢者に,抑制を廃止したことで,どのような変化(効果)が生じたかを測定用具を用いて実証することである。研究対象は,全面的に抑制を廃止したA病院に入院していた83名の患者である。抑制を受けたことがある高齢者(抑制群)17名と抑制を受けたことがない高齢者(非抑制群)66名について,「高齢者アセスメント表(MDS)」を用いて抑制廃止の前後の状態を比較した。その結果,抑制群が非抑制群に比べ改善した項目は,<D.気分と行動>のカテゴリーに属する「D1悲しみや不安な気持ち」(p<0.05),「D5問題行動への対処」(p<0.05),「D9対人関係の不安定」(p<0.01)の3項目であった。一方,抑制群の方が悪化した項目は,<B.認知,コミュニケーション>と<C.身体機能>のカテゴリーに属する4項目であった。