抄録
近年,脊椎動物と軟体動物の骨格を形成する骨と貝殻の真珠層に,共通の機能をもつタンパク質が存在する可能性が示唆されている。本研究では,貝殻を酢酸で脱灰することにより,すでにアスパラギン酸およびグリシンに富む酸性タンパク質が効率よく抽出,単離されている。我々はこの分子レベルでの解析を骨に応用し,牛大腿骨皮質骨から貝殻と同様に酢酸脱灰および酸性条件下でのイオン交換クロマトグラフィーを行い,新規酸性タンパク質を探索した。酢酸可溶性タンパク質のアミノ酸組成は,コラーゲンと同様の組成を示していた。イオン交換クロマトグラフィーによる精製を行い,カラムに吸着する画分をアミノ酸配列分析により解析した結果,グルタミン酸を含む微量の酸性タンパク質が存在していると推測された。このタンパク質は骨マトリックスの主成分であるコラーゲンに高い親和性をもち,骨石灰化過程に関与する新規タンパク質である可能性が考えられた。