魚類学雑誌
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コチ科魚類における雌雄同体性と性転換現象―I.アネサゴチの性転換
藤井 武人
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1970 年 17 巻 1 号 p. 14-21

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抄録

コチ科魚類における雌雄同体性をあきらかにする研究の一環としてアネサゴチ (Onigocia macrolepis) の雌雄性を研究した結果, 機能的には雄性先熟の性転換が行なわれていることがわかった.
本種は全長が150mmに達しない小魚であって産卵期は10~11月, 寿命は長くとも3年と推測される.性転換の行なわれる体長範囲は60-100mmであり, 75-85mmの時に最も多くの魚が性転換を行なう.体長に対して性比はS字状に変化し, 全体としては性転換が規則正しく行なわれることを示している.
成長過程の初期に, 組織の未分化な生殖巣は精巣のみの状態を経ることなく, 直接両性生殖巣に分化する.両性生殖巣は背側に卵巣部分が, 腹側に精巣部分がそれぞれ位置する二重の構造になっている.卵巣部分に腔所がない点でイネゴチやメゴチの両性生殖巣と形態的に異なっている.両性生殖巣では精巣組織のみが成熟する.両性生殖巣の精巣組織が退縮するにしたがって卵巣部分に卵巣腔, 卵巣薄板が形成され, ついには両性生殖巣が卵巣へと移行する.

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