魚類学雑誌
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三宅島におけるエソ科Synodus ulaeの産卵習性
Martha J. ZaiserJack T. Moyer
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1981 年 28 巻 1 号 p. 95-98

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抄録

三宅島沿岸で観察されたエソ科魚類Synodus ulaeの産卵行動について報告する.本科魚類の産卵習性は未知であった.本種の産卵は1980年9月7日18時04分に三宅島伊ケ谷湾水深14mで観察された.産卵時の水温は29℃, 潮流はほとんどなかった.彦卵は雌雄一対 (全長約20cm) によってなされたが, 雌雄の外見による識別は困難であった.雌雄は海底から約1m上昇し体側または腹部を互いに接触させたまま約4m急上昇して旋回し, 雌雄別々に海底に戻る.急上昇の頂点で産卵が行われ雲状の生殖体が多量に放出される.産卵観察は1例だけであったが, 求愛行動はしばしば目撃された.即ち雌雄が砂底上に体を接触させて静止し, 雄はときどき咽喉部をふくらませて雌の周囲をまわる.薄暮時の急上昇による本種の産卵行動は産卵時の捕食圧を防ぐための適応と考えられ, この点について論議を行った.

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