魚類学雑誌
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種々の塩分条件下におけるアユ精子の運動性と形態
打木 研三
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1993 年 40 巻 2 号 p. 273-278

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抄録

アユの精子の運動性に対するK+, Na+, およびそれぞれのイオンの浸透濃度の影響を調べた.その結果, アユの精子は塩分組成とは無関係に400mOsm/l以上の浸透濃度下では全く運動せず, 潜在的運動能力をも失った.精子の運動を許容する濃度範囲において, Na+は精子の活性や運動時間に影響を与えなかったが, 一方K+は低濃度では僅かに活性を低下させるかわりに運動時間を延長させ, 中濃度では強く運動を抑制するかわりに潜在的運動能力をむしろ高あ, 高濃度では強く運動を抑制するとともに潜在能力をも低下せしめるという, 濃度の違いに応じた様々な影響を与えた.またこれと平行して, 透過型電子顕微鏡で諸条件下における精子の形態観察を行なったところ, 潜在的運動能力を喪失したすべての精子にミトコンドリアの著しい膨潤が観察されたことから, 精子の死はミトコンドリアの機能不全によるものと判断された.

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© 日本魚類学会
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