カノコベラHalichoeres marginatusの雌雄性と繁殖行動について南西諸島の口永良部島の磯水域で調査した.本種の生息密度は低く, 単独で摂餌していた.本種は雌性先熟の雌雄同体で, 一次雄もわずかに存在した.雄には派手な体色 (TP) と雌と同じ地味な体色 (IP) のものがみられた.大型のTP雄は毎日午後遅くになると, やや沖合いの岩やサンゴ岩盤の突き出た部分を中心として一時的な繁殖縄張を形成し, そこへ移動してきた雌とペア産卵を行った.縄張をもたないTP雄やIP雄は岸近くの繁殖縄張に侵入を繰り返し, 繁殖縄張内でストリーキング, スニーキング, グループ産卵を行った.本種の繁殖行動を他のべラ類と比較して考察した.