2012 年 30 巻 3 号 p. 251-257
好酸球は,喘息やアレルギー性鼻炎などのTh2 pathologyにおいて重要な役割を果たしている。好酸球欠損mouse喘息モデルでは気道リモデリングを減少させるが,好酸球増多mouse喘息モデルでは,Th2 pathologyはむしろ減弱しており炎症局所での好酸球の明確な機能的役割に関してはまだ議論を得ていない。in vivoでは,さまざまな要因が複雑に絡み合うため,好酸球の機能的役割を検証することは,非常に難しい。そこで,我々は,その機能的役割を検証する方法として,分離した好酸球を経気道的にrecipient mouseにtransferして検討を行った。その結果,naïveな好酸球は気道炎症を惹起しなかったが,Th2 dominantの環境下で活性化された好酸球は,リンパ球非存在下(SCID mouse)でも気道炎症を惹起した。さらに,その活性化した好酸球は,Th1 cytokineであるIFN-γが有意に分泌されていた。好酸球から誘導されたIFN-γはautocrine的に好酸球自身を活性化し,気道炎症を増悪する方向に働いた。このことは,好酸球は,活性化しなければ組織傷害性に働くことはなく,Th2 dominantの環境下で誘導された好酸球であったとしても,IFN-γを産生することでTh2 pathologyを制御することが示唆された。つまり,この結果は,好酸球の活性化をいかにして制御するかが治療戦略のポイントとなることを示している。本稿では,気道炎症における好酸球の機能的な役割と古典的なTh1/Th2パラダイムに支配されたIFN-γ制御による治療戦略に関して述べていきたい。