産業動物臨床医学雑誌
Online ISSN : 2187-2805
Print ISSN : 1884-684X
ISSN-L : 1884-684X
症例報告
Dynamic Compression Plate による内固定を実施した黒毛和種子牛における上腕骨骨折2例
田村 倫也 工藤 力佐々木 ことえ庄野 春日渡邉 康平三浦 沙織
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 8 巻 4 号 p. 221-226

詳細
抄録

 牛における上腕骨骨折治療は髄内ピン,創外固定,プレート固定,spica スプリント,ストールレスト等が選択肢となるが,いずれの方法も現状では評価が一定していない.著者らは子牛の上腕骨骨折に対しDynamic Compression Plate(DCP)を用いた内固定を行った.症例1 は6 カ月齢,推定体重140 kg の黒毛和種子牛で,左上腕骨骨幹遠位部の斜骨折であった.症例2 は1 日齢,推定体重40kg の黒毛和種子牛で,左上腕骨骨幹遠位部の長斜骨折であった.手術は右側横臥位保定,キシラジン・グアイフェネシン・ブトルファノール混合液の点滴投与による鎮痛・不動化処置下で行った.上腕骨大結節から外側上顆付近まで切皮し,さらに上腕筋を分離し上腕骨にアプローチした.骨折部を整復し骨鉗子で仮固定した後,屈曲させたDCP (症例1:幅12 mm,長さ87 mm,症例2:幅12 mm,長さ103 mm)を上腕骨頭外側面へ適用し,4.5 mm 径皮質骨スクリューで固定した.症例1 では術後経過中スクリューの破折が見られたものの,術後68 日目に跛行消失を確認,順調に発育し繁殖牛として供用された.症例2 では順調に経過し,術後29 日目に跛行消失を確認,以後良好に発育した.症例1 ではプレート長の不足とベンディング不足により固定力が低下してスクリュー破折に至ったと考えられ,症例2 ではベンディングプレスを用いて上腕骨に合わせ強く屈曲させたプレートを適用したことで,固定が維持されたものと推察された.これら2 症例より,子牛の上腕骨骨折治療においてはDCP を用いた内固定が選択肢の一つとなり得ることが示唆され,その際には適切なプレートの選択と成型が重要であると考えられた.

著者関連情報
© 2017 日本家畜臨床学会・大動物臨床研究会
前の記事 次の記事
feedback
Top