法と心理
Online ISSN : 2424-1148
Print ISSN : 1346-8669
「治療的司法・正義」の議論のために
ケアとジャスティスの統合をとおした問題解決のための理論・実践・制度
中村 正
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ジャーナル オープンアクセス

2020 年 18 巻 p. 6-13

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抄録

生活することに特別なニーズや課題を抱えたひとたちがいる。なんらかの障害、老いに伴うまま ならない事態、病気による諸困難、多数の人とは異なる特性をもつ人たち等は生きづらさに直面し やすい脆弱性をもつ。このなかからさらに問題行動、逸脱行動、触法行動へと至ることもある。筆 者は、司法の理念である正義の実現(ジャスティス)はこうした要支援ニーズをもつひとたちに対し て回復ややり直し(ケア)を接ぎ木するべきであると考え、そのための臨床を DV と虐待の加害者に 試みている。その考えをさしあたり「治療的司法」と呼ぶことにして、社会はそのための機会と資源 を開発、提供すべきであるということを検討したい。さらに法は家庭に入らずということで親密な 関係性における暴力は長く放置されてきた。保護命令や接近禁止命令の一環として多様な行動変容 の機会を提供すべきであることもこの視野に入れておきたい。被害者のケアと加害者の更生の統合、 自己流の問題解決行動としての嗜癖的な行動を解決する司法が求められている。

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© 2020 法と心理学会
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