法と心理
Online ISSN : 2424-1148
Print ISSN : 1346-8669
「治療的司法」の今とこれから
日本における更生支援型刑事司法を考える
指宿 信
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ジャーナル オープンアクセス

2020 年 18 巻 p. 14-20

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抄録

本稿は、犯罪者の再犯防止に向けて刑罰効果よりも抱えている問題を解決することによって目的 を達成しようとする新しい司法哲学である「治療法学(therapeutic jurisprudence)」の理念の成り立ち から、この理念に基づいた司法のあり方を示す「治療的司法」概念を説明、その上に構築される具体 的制度である「問題解決型裁判所」を説明するとともに、米国を中心に世界に広がる様々な裁判所~ ドラッグ・コート、DV コートなど~の機能を紹介する。そしてわが国において再犯防止に取り組 む近年の刑事司法アクターの動きを紹介し、政府レベルや学術の世界で治療的司法と通底する多様 な動きが出てきたことに触れ、再犯防止、刑務所再入率を低下させるためには現状の施策では不十 分であることを指摘し、起訴猶予制度や出所後の支援といった現行制度を前提にした取り組みから、 問題解決型裁判所の導入によって刑事司法過程そのものを再犯防止に向けた形に変革するよう改革 することを説く。

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© 2020 法と心理学会
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