2020 年 20 巻 1 号 p. 141-149
本研究は、厳罰傾向とアイデンティティの不安定性の関連を、排他性の媒介効果に焦点を当てて検討することを目的とする。アイデンティティは心理学において古くから論じられてきた概念であるが、近年の犯罪学では、そのアイデンティティの不安定性が排他性によって媒介されて厳罰傾向に影響を与えることを主張する議論が提示されている。この議論ならびに関連する実証研究に従い、本研究では、(a)排他性はアイデンティティの不安定性と刑罰の厳罰化への支持の関連を媒介する、(b)排他性はアイデンティティの不安定性と刑罰の早期拡大化への支持の関連を媒介するという 2つの仮説を設定し、検討を行った。大学生から得られたデータ(N=192)を分析した結果、両方の仮説が支持され、上述の議論が個人レベルにおいても当てはまることが示唆された。