法と心理
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法と心理研究への感謝と期待-弁護人の視点から
学会設立20周年記念学会企画シンポジウム 裁判員制度を巡る法と心理学研究のレビューと展望
菅野 亮
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ジャーナル オープンアクセス

2020 年 20 巻 1 号 p. 57-63

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抄録

刑事裁判で心理学が果たしている役割は大きい。裁判員裁判では、法廷における弁護人の活動はプレゼンテーションであることが意識されている。弁護人の主張を説得的に語り、事実認定者の共感を得るため、心理学の知見が参考とされている。供述の信用性が問題になる事例で、供述心理学者の意見を証拠とすることもある。しかし、裁判官及び検察官は、供述心理学を正当に評価しているとは言い難く、今後、心理学者及び弁護人により、その有用性等を伝えていく必要がある。 裁判員裁判が始まり、約10年が経過した。裁判員の事実認定等に不当な影響を及ぼすことのない審理が行われ、裁判官と裁判員が実質的に協働したといえる評議が行われる必要がある。そのために、裁判員が参加していない公判前整理手続の在り方が、公判審理や評議にどう影響しているか、あるいは、裁判官だけが公判前整理手続に参加することにより生じた情報格差が評議にどう影響しているのか等、心理学的検討が必要である。また、裁判官の質問、法廷や評議における態度等が、裁判員の心証形成等にどう影響を与えうるのか、被害者参加制度やいわゆる刺激証拠が事実認定にどう影響を与えうるのかについても心理学の立場から積極的な提言を期待している。

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