実際に起こった殺人事件の目撃証言の信頼性を調べるために、本研究では顔の同一性識別に及ぼす視力の効果が検討された。実験1において、視力検査用レンズを用いて視力を変化させ、下降系列で距離を変えて提示される実際の人物の識別できる距離が測定された。得られた結果は視力と識別可能距離との間に線形関数を示した。実験2において、視力0.4の被験者が16.45m離れたところから目撃した容疑者の視覚イメージをビデオカメラのレンズの焦点を調整することによってビデオ画像として生成した。実験3と4では、髪型が手がかりとして与えられる条件と与えられない条件とにおいて、実験2において生成されたイメージと顔写真を照合するように被験者に求めた。いずれの実験においても顔の同一性識別はできなかった。これらの結果が目撃証言の信頼性に対して持つ意味について議論される。