2005 年 4 巻 1 号 p. 47-59
本研究の目的は、仮想的に裁判員の立場から被告人を裁くことを求められた場合、参加者は証拠不採用となった被告人の自白の供述書を無視することができるか、また採用証拠をストーリ一モデルにもとついて評価するかについて確かめることにある。実験1は社会人、実験2は学生を対象に行ったが、いずれも参加者に架空の殺人事件の公判シナリオを示し、自白の存在が示された後に証拠採用となるA(採用)条件、証拠不採用となるI(不採用)条件、自白の存在が示されないC(統制)条件の3条件に分けた。A条件、I条件の参加者には自白が得られた状況についての警察官、被告人の主張を聞いた後に「自白が被告人の任意になされたか否か」について個別に判断を求めたが、この参加者自身の下した「任意性判断」とは独立に、自白の採用、不採用を条件別に公判シナリオで示した。その結果、有罪判断率(有罪判断を下した参加者の割合)は実験1、実験2ともに不採用証拠の影響を受けておらず、合理的な判断を下しているようにみられた。また社会人、学生ともにストーリーモデルにほぼ合致した判断傾向、学生の方がシナリオの内容を正確に記憶している傾向がみられた。