抄録
舌側矯正治療患者の中には、歯肉に炎症を起こす患者がいる。ブラッシング指導を積極的に行うだけでは、炎症が消退しない事も多い。その原因として、①正面から見えない所に装置が装着されている為、歯垢がとりにくい事②全歯牙の内、ブラケットのポジショニングが歯肉に近い所に接着されている部位が存在し、ブラケットと歯肉の間に歯垢の蓄積が増加しやすい事③ブラッシング技術が個人個人によって差が存在する事④成人性歯周炎の原因菌が口腔内に多く存在するといった、宿主の細菌叢の違いとその感受性で歯肉炎になりやすい患者がいる事が考えられる。
歯肉炎、歯周炎は細菌による感染症であると言える為、歯周治療に基づき、資料採得(生活習慣調査、パノラマX線写真、口腔内模型、ポケット診査、歯周病細菌検査)を行った。その後、歯周基本治療である、生活習慣指導、ブラッシング指導、スケーリング、抗菌剤の局所投与を行い、プロービングデプスの変化を調べ、炎症の改善が認められた。