日本舌側矯正歯科学会会誌
Online ISSN : 1884-538X
Print ISSN : 1883-6216
ISSN-L : 1883-6216
舌側矯正におけるスライディングメカニクスによる前歯舌側傾斜のメカニズム
有限要素法による検討
河村 純玉谷 直彦
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 2020 巻 30 号 p. 5-13

詳細
抄録

 スライディングメカニクスを用いて前歯を舌側移動する場合,前歯が舌側傾斜するメカニズムを有限要素法シミュレーションに基づいて研究した.  顎内牽引では,アーチワイヤーがたわみ,それに伴って前歯の舌側傾斜が生じた.牽引力を小さくすると,あるいはアーチワイヤーのサイズを大きくすると,舌側傾斜が減少した.曲げたアーチワイヤーを装着すると,たわみと前歯の舌側傾斜を防ぐことができた.リンガルルートトルクを与えた場合,前歯の舌側傾斜を防げたが,アーチワイヤーのたわみは防げなかった.  矯正用アンカースクリューからアーチワイヤーに牽引力を加えた場合,アーチワイヤーのたわみだけでなく,歯列全体の回転によっても前歯が舌側傾斜した.大臼歯はやや舌側傾斜した.曲げたアーチワイヤーを用いると,たわみを防ぐことができたが,歯列全体の回転は防ぐことができなかった.  アーチワイヤーに長いアームを鑞着して,牽引力の作用線が前歯の抵抗中心付近を通るようにした場合,歯列全体の回転とアーチワイヤーのたわみがほとんど起こらず,前歯がほぼ歯体移動した.

著者関連情報
© 2020 日本舌側矯正歯科学会
次の記事
feedback
Top