日本舌側矯正歯科学会会誌
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マルチスロットリンガルブラケットの活用法
宮本 豊友成 博
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2020 年 2020 巻 30 号 p. 14-24

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抄録
 マルチスロットリンガルブラケットは以下の利点を有している; 1. 上顎側切歯を唇側へアライメントする際,過度に唇側傾斜することを防ぐことができる. 2. ホリゾンタルスロットとバーティカルスロットが存在し,お互いの欠点を補うことができる. 3. 早い段階でブラケット未装着部のスペース・オープニングを行うことができる. 4. 臼歯部には小型のブラケットを用いることにより,ワイヤーのストレート化を容易に行うことができる. 5.ブラケットが大きいため,歯石がウイング下やスロットに侵入しにくい. これらの利点について,症例を交えて供覧する.  14歳の女子.叢生と上顎前歯の前突を主訴として来院した.上下顎に叢生と,過大なoverjetがみられた.臼歯関係は両側ともⅡ級を呈していた.側面頭部エックス線規格写真の分析結果より,下顎後方回転による骨格性Ⅱ級,およびhigh angleがみられた.また上下顎とも前歯は唇側傾斜していた.以上より,high angleを伴うAngle Ⅱ級叢生症例とした.上顎両側第一小臼歯,下顎両側第二小臼歯を抜去し,上顎は歯科矯正用アンカースクリューを用いて最大の固定にてリンガルマルチブラケット装置による排列を行った.
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© 2020 日本舌側矯正歯科学会
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