音声言語医学
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特集<喉頭瘢痕性病変へのアプローチ>
声帯内側頭筋筋膜自家移植術の瘢痕病変としての声帯溝症への応用と今必要な研究としての難病対策
—厚生労働省声帯溝症班研究—
角田 晃一
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2010 年 51 巻 2 号 p. 183-186

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抄録

声帯の瘢痕病変の代表である声帯溝症等は, 発声障害のみならず進行すると, 力が入らない, 重い荷物が持てない等の胸郭の固定障害, 気管につばが流入するなど嚥下障害, つまり社会生活におけるQOLの著明な低下をきたす. 若年者 (65歳未満) では頻度は低いが, 発症すれば活躍すべきときに音声言語コミュニケーション障害をきたし, メガネ, 補聴器に比し, 一見理解しにくい分, 大きなハンディーとなりうる.
治療の歴史は, さまざまな物質の声帯への注入や, 一色の手術を含む多くの音声外科治療が行われている. 私は自家筋膜を移植, 創傷治癒機転により声帯を再生させる「声帯内側頭筋筋膜自家移植:ATFV」法と, 発声訓練による積極的介入を行っている.
しかしながら診断・治療法は施設によりまちまちで, QOLの地域格差の出現も懸念される. その最大の理由は, 診断基準を含め, 国内・外を問わず大規模な疫学を含む診断・治療の実態調査が行われていないことが考えられる.
視・聴覚に対するメガネ, 補聴器など, 感覚器情報のinput器官では当たり前に行われている対策を, 感覚器情報へのoutput障害 (発声障害) の代表として声帯溝症を選び, 患者の症状と要望, 診断・治療の実態など, 臨床調査研究を効率良く実施し不明な点を明確にし, 安全かつ経済的な診断・治療法の選択とその診断治療の標準化を図る指針・ガイドラインの作成を提案すべく班研究を開始している.

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© 2010 日本音声言語医学会
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