2021 年 62 巻 1 号 p. 33-38
臨床実習は言語聴覚士の養成課程のうち,学生にとって最もコミュニケーション・スキルを問われる場面であるが,学生のコミュニケーション能力の問題を指摘されることも少なくない.本研究では,コミュニケーション・スキルを測定する質問紙法により学生を3つの群に分類した.各群に発話速度を5つの条件で調整した問診場面の音声を聴いて「患者を問診するのに望ましい態度」について主観的に判断させた.他者評価が低い学生群と自己評価が低い学生群では,他者の発話速度から得られる「患者に対する望ましい態度」に関する認識が指導者と異なることが明らかとなった.みずからのコミュニケーションに対する客観的視点をもつことが困難な学生が一定数存在し,相手の反応に対する認識の違いのために,指導者とのコミュニケーションの齟齬が生じている可能性が考えられた.