2021 年 62 巻 3 号 p. 205-214
Dysarthriaの構音異常の音響指標として,第2フォルマント(F2)移動の諸計測(移動時間,移動域,移動率F2 slope)が示されてきた.F2移動が日本語話者でも有用かを知るために,F2移動諸計測のdysarthria話者と健常話者との違い,発話明瞭度との関係性,同一話者で標的語での違いの程度を調べた.軽度と中等度のdysarthria話者13名と若年健常話者23名に「北風と太陽」を音読させ,標的語(太陽,外套)の連母音/ai/のF2移動部分を測定した.Dysarthria話者は若年健常話者よりもF2移動時間が有意に長く,F2 slopeが有意に小さかった.発話明瞭度は,F2 slopeと有意な相関があった(rs=−0.59).標的語とその再出で,dysarthria話者はF2移動の変動が大きかった.F2移動は日本語話者のdysarthria例の構音機能評価に活用できる可能性がある.