本研究は初回評価時3歳0ヵ月から4歳0ヵ月の自閉スペクトラム症(ASD)幼児7名を対象に「お話し作り課題」における幼児の発話の自発性の側面,語彙や統語等の構造的側面,ストーリーのエピソードの生起頻度やエピソード同士の連鎖といった内容的側面に焦点を当て,同年齢範囲の定型発達(TD)幼児7名と縦断的に比較を行った.「お話し作り課題」では,人形やミニチュアを用いて幼児に物語の導入部分を聞かせ,幼児自身が話の続きを作る課題を設定した.その結果,「お話し作り課題」における自発性の側面や構造的側面においては群間に有意差はなく,両群ともに自立語平均発話長(JMLU)や接続表現が増え,発話を自発的に連鎖させていく過程が見られた.ストーリーの内容的側面においては,ASD幼児は初回評価時では,ストーリーのエピソードの生起頻度やエピソードの連鎖が少ないこと,ストーリーとは無関連な発話が多いことが認められたが,生活年齢の上昇に伴い差は消失し,TD幼児と同様に表出するエピソードが増え,エピソードが連鎖していく過程が見られた.