音声言語医学
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原著
  • 大門 正太郎
    2022 年 63 巻 2 号 p. 89-95
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/17
    ジャーナル 認証あり

    動詞の呼称が困難な失語症例を対象に,動詞の喚語訓練として,「名詞+助詞+動詞」の2文節文(例:本を読む)の速読訓練を実施した.症例は,動詞の喚語困難と意味性錯語が特徴的であった.一方,名詞と動詞の聴覚的理解は比較的良好であった.本症例に対して3つのリストを用いて30日間,2文節文を正確に速く音読するように反復し訓練を実施した結果,1)10日間の訓練後は,意味性錯読に伴う自己修正が減少したことにより,音読所要時間は短縮した,2)1文当たりの音読所要時間と訓練日数との間に負の相関関係を認めた,3)TLPA動詞呼称検査では訓練後に正答数が有意に増加し,訓練後の動詞呼称の際に名詞句から動詞の喚語にいたる反応数が有意に増加した.これらの結果より,2文節文の速読訓練は,動作絵の呼称の際に目標動詞の音韻列表象を正確に素早く引き出させる効果があることが示唆された.

  • ―日本語版の短縮版CADL検査とWAB失語症検査日本語版を指標にして―
    福永 真哉, 永見 慎輔, 原山 秋, 池野 雅裕, 矢野 実郎, 中村 光
    2022 年 63 巻 2 号 p. 96-102
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/17
    ジャーナル 認証あり

    失語症者のコミュニケーション障害は,言語機能障害と強く関連することが知られている.しかし,コミュニケーション能力と個々の言語機能,知的機能を含む非言語性機能との関連やその強さは,いまだ明らかにはなっていない.本研究では失語症者の実用コミュニケーション能力と関連する言語機能,非言語性機能を日本語版の短縮版実用コミュニケーション能力検査(短縮版CADL)とWAB失語症検査日本語版(WAB失語症検査)を用いて検討した.その結果,短縮版CADLの得点と年齢,教育年数,WAB失語症検査の各下位検査の得点との間で,それぞれ有意な相関が認められた.短縮版CADLの得点を従属変数に,WAB失語症検査の下位検査の得点を独立変数として重回帰分析を行ったところ,WAB失語症検査の聴理解,書字,構成が有意な下位検査として抽出された.加えて,発症からの経過月数の違い,失語タイプの違いによって,実用コミュニケーション能力に関連する下位検査は異なることが示唆された.

  • 大石 如香, 菅井 努, 田村 俊暁
    2022 年 63 巻 2 号 p. 103-114
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/17
    ジャーナル 認証あり

    心原性脳塞栓後に表記不能型ジャルゴンを呈し,経過とともに伝導失語に収束した1例を報告した.症例は68歳右利き男性.発症初期に自発話において,音の歪みによる構音の不明瞭さがあるため日本語の音韻体系では表記困難な流暢性発話を呈し,表記不能型ジャルゴンと考えられた.本例に見られた3つの特徴として,(1)自発話における談話水準の流暢な表記不能型ジャルゴンと課題場面での非流暢発話の対照性,(2)自己発話に対するモニタリング障害,(3)重度の音韻処理障害が認められた.その後,経過とともに徐々に構音が明瞭化し,発症6ヵ月後には音断片,音韻性錯語を主症状とする伝導失語に収束した.本例に見られた表記不能型ジャルゴンの成因として,失構音と自己発話のモニタリング障害に加えて,重度の音韻構造化の障害が推測された.また,これらの機能低下は左中心前回,中心後回,上側頭回皮質および皮質下損傷に起因するのではないかと考えられた.

  • ―知的障害児,自閉スペクトラム症児,定型発達児間の比較―
    竹尾 勇太, 大伴 潔
    2022 年 63 巻 2 号 p. 115-122
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/17
    ジャーナル 認証あり

    本研究では,知的障害児の文の表出の特徴を明らかにするために,能動文と受動文を用い,態を変換させる課題を用いて視点の移動の影響について検討した.研究参加者は知的障害児(ID児)14名,自閉症を伴う知的障害児(ASD児)14名,定型発達児(TD児)16名であった.課題は,主語と目的語を入れ替え,能動文と受動文を交互に産出させる誘導産出課題を用いた.参加者は能動文に続いて受動文の表出を求めた群と,受動文に続いて能動文の表出を求めた群に分けられた.その結果,ID児およびASD児は視点の移動前よりも移動後の成績が有意に低かった.一方,TD児は表出の順序にかかわらず受動文の成績のほうが有意に低かった.このことから,知的障害児は自閉症の有無にかかわらず,視点の移動に伴う態の変換に困難があることが示唆された.一方,TD児では生活年齢が5歳台の場合,視点の移動よりも構文の違いの影響のほうが大きく,受動文の習熟度が関与している可能性が示唆された.

  • ―定型発達児との比較による縦断的検討―
    溝江 唯, 大伴 潔
    2022 年 63 巻 2 号 p. 123-131
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/17
    ジャーナル 認証あり

    本研究は初回評価時3歳0ヵ月から4歳0ヵ月の自閉スペクトラム症(ASD)幼児7名を対象に「お話し作り課題」における幼児の発話の自発性の側面,語彙や統語等の構造的側面,ストーリーのエピソードの生起頻度やエピソード同士の連鎖といった内容的側面に焦点を当て,同年齢範囲の定型発達(TD)幼児7名と縦断的に比較を行った.「お話し作り課題」では,人形やミニチュアを用いて幼児に物語の導入部分を聞かせ,幼児自身が話の続きを作る課題を設定した.その結果,「お話し作り課題」における自発性の側面や構造的側面においては群間に有意差はなく,両群ともに自立語平均発話長(JMLU)や接続表現が増え,発話を自発的に連鎖させていく過程が見られた.ストーリーの内容的側面においては,ASD幼児は初回評価時では,ストーリーのエピソードの生起頻度やエピソードの連鎖が少ないこと,ストーリーとは無関連な発話が多いことが認められたが,生活年齢の上昇に伴い差は消失し,TD幼児と同様に表出するエピソードが増え,エピソードが連鎖していく過程が見られた.

症例
  • 宮本 昌子, 舘田 美弥子, 深澤 菜月, 飯村 大智
    2022 年 63 巻 2 号 p. 132-142
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/17
    ジャーナル 認証あり

    早口言語症の症状を示す10歳の男児を対象に,発話速度コントロールを目指した認知・行動アプローチによる介入を行った.認知・行動アプローチの方法に従い,最初にモニタリング機能に焦点を当てた指導を行ったうえで,発話速度を低下させた話し方の指導に移った.介入の6ヵ月間経過後に,「記憶した物語再生課題場面」で総非流暢性頻度が有意に低下したこと,開始時に実施した日本語版早口言語症チェックリストver. 2の得点が21点から9点へと低下したことから,指導の終結を判断した.発話をシンプルにすることで伝わりやすくなるという気づきのあった後,言語形式化が良好になり非流暢性頻度が低下したことが推測される.一方,発話速度低下が測定値からは認められず,その解釈については注意が必要である.本研究の結果からは,認知・行動アプローチに含まれるモニタリングスキル指導が非流暢性頻度低下に影響し,早口言語症改善に寄与した可能性があることが推測されるが,今後は,早口言語症のある発話において妥当な速度の測定法を検討したいと考える.

  • 源田 亮二, 佐藤 康次, 沖田 浩一, 八幡 徹太郎
    2022 年 63 巻 2 号 p. 143-148
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/17
    ジャーナル 認証あり

    気管切開患者の代用音声獲得に,電気式人工喉頭(EL)とカフ上発声(ACV)を併用する音声リハビリテーションを行い,会話明瞭度と会話満足度の向上を認めた症例について報告する.
    症例は,70代の男性,肺癌手術後に気管変形をきたし気管切開され,心停止後蘇生となり,長期にわたり発話音声による表出が不可能となった.代用音声としてELを試みたが文レベルでは会話明瞭度4であった.ACVは酸素流量が3 L/分で喉の不快感が強く,1 L/分にすると会話明瞭度4になり,実用的でなかった.そこで両者を併用すると会話明瞭度2.5に向上した.
    併用した発話音声は,気管切開患者のコミュニケーションに利用できる可能性がある.

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