音声言語医学
Online ISSN : 1884-3646
Print ISSN : 0030-2813
ISSN-L : 0030-2813
原著
2文節文の速読訓練にて動詞の喚語能力が改善した失語症例
大門 正太郎
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 63 巻 2 号 p. 89-95

詳細
抄録

動詞の呼称が困難な失語症例を対象に,動詞の喚語訓練として,「名詞+助詞+動詞」の2文節文(例:本を読む)の速読訓練を実施した.症例は,動詞の喚語困難と意味性錯語が特徴的であった.一方,名詞と動詞の聴覚的理解は比較的良好であった.本症例に対して3つのリストを用いて30日間,2文節文を正確に速く音読するように反復し訓練を実施した結果,1)10日間の訓練後は,意味性錯読に伴う自己修正が減少したことにより,音読所要時間は短縮した,2)1文当たりの音読所要時間と訓練日数との間に負の相関関係を認めた,3)TLPA動詞呼称検査では訓練後に正答数が有意に増加し,訓練後の動詞呼称の際に名詞句から動詞の喚語にいたる反応数が有意に増加した.これらの結果より,2文節文の速読訓練は,動作絵の呼称の際に目標動詞の音韻列表象を正確に素早く引き出させる効果があることが示唆された.

著者関連情報
© 2022 日本音声言語医学会
次の記事
feedback
Top