音声言語医学
Online ISSN : 1884-3646
Print ISSN : 0030-2813
ISSN-L : 0030-2813
原著
自然発話場面における構文発達の検討
—2歳以降の助詞の使用分析から—
山﨑 志穂小坂 美鶴
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 63 巻 3 号 p. 163-170

詳細
抄録

日本語を母語とする2歳前後の幼児を対象とした構文発達に関する総合的な研究は少なく,その過程は明らかとなっていない.本研究の対象は,継続的な観察に同意を得ることのできた女児3名である.観察期間は2歳0ヵ月〜2歳6ヵ月までであり,母子相互作用のなかでの助詞の使用頻度を縦断的に観察し,個人差や共通性について比較検討した.3名ともに2歳0ヵ月にはすでにいくつかの助詞の出現が見られた.観察期間中に3名が獲得した助詞は,終助詞,格助詞,接続助詞,係助詞とさまざまであった.係助詞「は」「も」は早期に獲得されたが,格助詞「が」は他の助詞よりも数ヵ月遅れた.また,個人差も大きく,2語文が遅かった児はその後の観察においても助詞の数量や種類ともに少なく,緩やかな発達であった.自然発話場面での2歳以降の助詞の種類や使用頻度の観察は,その後の構文発達において重要な指標となりうると考えられた.

著者関連情報
© 2022 日本音声言語医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top