音声言語医学
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症例
ボツリヌストキシン注入術と音声訓練の両方を実施した106症例の治療経過
大塚 満美子佐藤 絵梨熊田 政信
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2022 年 63 巻 4 号 p. 262-268

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抄録

痙攣性発声障害(SD)の治療においては,鑑別診断が重要となる.2007年から2017年の10年間に当院を受診し,内転型SDや機能性発声障害が疑われた症例を後方視的に検討した.対象の 826例の治療内訳は,ボツリヌストキシン注入術(注射)のみが407例,音声訓練(訓練)のみが284例,注射と訓練の両方が135例であった.そのうち,注射と訓練の両方を実施して経過を確認できた106例の治療経過は,①注射を先行して補助的に訓練追加(診断はSD):27例,②注射を先行して訓練へ移行(診断は機能性):33例,③訓練を先行して注射へ移行(診断はSD):32例,④訓練を先行して注射後に訓練再開(診断は機能性):14例,の4パターンに大別された.注射も訓練も一定の治療効果や鑑別診断のための有用性が得られたことから,治療方針の選択の過程において注射と訓練という双方の選択肢があることは有意義であると考えられた.

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© 2022 日本音声言語医学会
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