本稿では,発声・発話機能の改善を目的とする歌によるリハビリテーション「音楽療法ボイスプログラム(MTVP)」について解説する.この介入プログラムは,パーキンソン病患者を対象とし,歌うことの運動療法的な効果に着目したものである.歌うことが呼吸器官や体幹の筋肉をダイナミックに活用した「運動」であることは,リアルタイムMRIで確認されたプロ歌手による横隔膜の巧みなコントロールにも表れている.また,長年歌うことを習慣としてきた高齢者の発声機能が,習慣としてこなかった者に比べ高いことから,歌を継続することのメリットも推察される.MTVPは,身体のウォームアップ,呼吸・発声・構音の訓練,音読訓練,好みの曲の歌唱等を含む一連の活動からなる.音楽療法士は,歌うことに伴う心理的な影響も勘案しながら,発声・発話能力の向上を目指す.