2024 年 65 巻 2 号 p. 61-76
背景:1924年にEmil FroeshelsによってInternational Association of Logopedics and Phoniatrics(IALP)が設立されて以来,コミュニケーション科学・障害の分野は,独立した科学的・臨床的学問分野として正式に位置づけられるようになった.
目的:ブルガリアと日本における言語病理学の主要な歴史的段階を要約し,特にIALPがこれらの国々における言語病理学の発展に与えた影響に重点をおく.
方法:伝記的,民族学的,図像学的,文書史的,専門的な文献資料の分析を含む歴史的アプローチを用いた.ブルガリアと日本における言語病理学の発展の異なる段階を概説した.
結果:ブルガリアと日本の言語病理学のルーツは19世紀初頭にあり,聴覚障害者のための特殊教育と関連していた.両国の言語病理学の研究は,吃音や関連する流暢性障害に焦点が当てられ始まった.ブルガリアの言語治療学(logopedics)は,ウィーン,ベルリン,プラハ,モスクワの学派に代表されるように,ヨーロッパの影響を強く受けている.日本の言語病理学はヨーロッパの学派だけでなく,アメリカの視点からも影響を受けている.20世紀半ばには,両国ともに,耳鼻咽喉科学と音声医学の影響を強く受けるようになった.
結論:ブルガリアと日本における言語聴覚障害学の基本的側面は,ヨーロッパの伝統による影響を受けており,その発展は第二次世界大戦後に加速した.この数十年の間に,科学的概念と専門職の普及が,各国の教育,経済,文化,歴史的伝統に従って両国に拡大した.