1983 年 24 巻 4 号 p. 248-256
幼児期にみられる発話の非流暢性と言語習得との関連を明らかにするための予備的研究の一つとして, 普通児9名の発話の非流暢性を3~6歳まで縦断的に検討した.発話は自由遊び場面からテープレコーダーによって収集した.その結果, 以下の知見を得た.
1) 非流暢性の頻度が3歳または4歳で高く, 5歳または6歳で減少する幼児が多かった (9名中8名) .2) 3~4歳, 特に3歳では複雑な構造をもつ文や長文を多く使用する幼児ほど高い非流暢性を示したが, 6歳ではこのような傾向はなかった.3) 4~6歳にかけては複雑文, 長文の使用が増加する幼児が多かった (9名中8名) が, そのうちの7名の非流暢性は4~6歳にかけて減少する傾向にあった.4) 5~6歳に比して3~4歳で非流暢性が言語習得と密接な関連をもつ理由について考察を加え, さらに, 幼児期に一般にみられる非流暢性と吃音の初期症状との類似点と相違点を検討した.