音声言語医学
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嗄声の聴覚心理的評価の再現性
阿部 博香米川 紘子太田 文彦今泉 敏
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1986 年 27 巻 2 号 p. 168-177

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抄録

嗄声の聴覚心理的評価“GRBAS”尺度を用いた評定の再現性について検討した.正常サンプル8例を含む98の音声サンプル/e: /を6名の聴取者におのおの5回ずつ評定させ, 聴取者間および聴取者内の変動を調べた.
その結果, 聴取者・尺度あるいは音声サンプルによって再現性に差があった.一部の聴取者では, たとえば“G”の評定では試行間の相関係数が平均0.87と高く, これは比較的経験の多い聴取者であった.尺度については“C”や“B”で高く“A”では低かった.また, 各尺度についてその性質が極めて強いあるいは弱い音声サンプルでは再現性が高いが, そうでないサンプルでは必ずしも高いと言えなかった.“G”の評定と相関の高い尺度は“R”, “, B”, “S”のいずれかで, “A”との相関はどの聴取者でも最も低かった.
以上のことは, 聴取者によって尺度の解釈や内的基準が統一されていないことを窺わせ, これらに対する具体的対策が求められる.

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© 日本音声言語医学会
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