1989 年 30 巻 4 号 p. 328-333
脳卒中のあと吃症状 (acquired stuttering) が出現したケースの言語症状と脳病変について検討した.患者は26歳の男性で生育歴, 家族歴には全く異常はない.21歳時 (大学生) に左中大脳動脈領域の動静脈奇形破裂で開頭手術を受けたが, 回復と同時に吃症状がみられ, それ以来, 同じ状態が5年間続いている.脳病変は左側の運動前野であり, 言語症状は「の」の発作性反復と語頭音の反復, さらに語の挿入が混在した吃症状であり, 精神的緊張が増すと顕著になった.吃症状に対する二次的反応はほとんどみられなかった.