音声言語医学
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30 巻, 4 号
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  • 八幡 英子, 伊福部 達
    1989 年 30 巻 4 号 p. 309-315
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    電気人工喉頭音声の不自然性を改善するために, 音声のゆらぎが自然性にどのように寄与するかを調べた.その結果, ピッチパターンについては, 発声直後のピッチ周波数の変化速度が0.45Hz/msec, 上昇時間は60msec程度が最適であることがわかった.また, 定常部ではピッチを直線的に減少させると自然性が高くなるという評価が得られた.さらに, 音声の自然性には, 波形のゆらぎが大きく寄与していることがわかった.これらの結果に基づき, 自然性を高めるようなピッチパターンが付与された電気人工喉頭を試作した.とれには, ピッチパターン設定の他に使用者が任意にピッチ周波数を制御する機能が付いている.本装置を使用して単語発声中にピッチ周波数を制御することにより正常音声に近い抑揚を付けることができた.
  • 佐竹 恒夫, 那須 道子, 外山 浩美
    1989 年 30 巻 4 号 p. 316-327
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    1) 言語記号未習得の言語発達遅滞児5例 (3~5歳) に, 記号形式―指示内容関係に基づく言語訓練を実施し, 訓練プログラムの有効性を検討した.
    2) 5例とも設定した記号形式―指示内容関係の段階すなわち, 〈段階2-1事物の機能的操作〉→〈段階2-2ふるい分け〉→〈段階2-3選択〉→〈段階3-1身振り記号〉→〈段階3-2音声記号〉, 以上の順に言語記号の習得に至り, 本訓練プログラムは有効だった.
    3) 言語記号の受信と発信の関係, 複数の訓練材料の使用, 身振り記号の意義等について論じた.
  • 永渕 正昭, 高橋 剛夫
    1989 年 30 巻 4 号 p. 328-333
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    脳卒中のあと吃症状 (acquired stuttering) が出現したケースの言語症状と脳病変について検討した.患者は26歳の男性で生育歴, 家族歴には全く異常はない.21歳時 (大学生) に左中大脳動脈領域の動静脈奇形破裂で開頭手術を受けたが, 回復と同時に吃症状がみられ, それ以来, 同じ状態が5年間続いている.脳病変は左側の運動前野であり, 言語症状は「の」の発作性反復と語頭音の反復, さらに語の挿入が混在した吃症状であり, 精神的緊張が増すと顕著になった.吃症状に対する二次的反応はほとんどみられなかった.
  • 福田 友美子, 城間 将江, 舩坂 宗太郎
    1989 年 30 巻 4 号 p. 334-339
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    6人の人工内耳の埋め込み患者について, 手術3カ月後, 音声知覚能力の評価を, 音声と口形のビデオテープを用いて行い, そのデこタを, 人工内耳によって生じる聴覚と読唇との併用の観点から検討した.その結果, 1) 聴覚と読唇を併用すると, 読唇だけ・聴覚だけによるよりも, 音節・単語・文章のすべてを, よく知覚できた.2) 子音の知覚については, 先天性難聴者と同様に, 調音方法が聴覚によって, 調音場所が視覚によってよく知覚され, 視覚と聴覚を併用するとそれらが相補的に働いて明瞭度が上昇した.3) モーラの区分は聴覚によってよぐ知覚されていた.4) 本研究の後天性聴覚障害者の患者では, 人工内耳聴覚による音声知覚の学習の方が読唇によるものより容易に成立することが示唆された.
  • 深澤 達也
    1989 年 30 巻 4 号 p. 340-347
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    声道の模型を使い気息声/h/の発生メカニズムを調べた.喉頭蓋に見立てた障害物を声道に置いた場合, 乱流雑音の強度は, 置かない場合め2.9倍に増加した.障害物と気流との相互作用には, 気流の分離が必要であることも判明した.音響学的には, 声道内の雑音音源はスペクトル上にzeroを作っていた.これは音源と声門とで作るback cavityの反共振であると考えられた.
  • ―ヒトのモデルとしてのトリの場合―
    斎藤 望, 前川 正夫
    1989 年 30 巻 4 号 p. 348-359
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    The mammalian motor cortex sends efferent motor commands and receives two kinds of feedback, internal and external. The avian vocal command center, robustus archistriatalis (RA) which corresponds to the mammalian motor cortex, also receives internal and external feedback which are integrated in the hyperstriatum ventralis pars caudalis (HVc) . The present study clarifies the avian feedback path by analysing neural substrates in the HVc: the HVc contains 3 kinds of neurons in which auditory responses interact and constitute both feedback paths. A speculative theory of the song production mechanism is discussed on the basis of the evidence of synaptic connections between three kinds of the HVc neurons.
  • 宇高 二良, 兼竹 博之, 木原 浩文, 小池 靖夫
    1989 年 30 巻 4 号 p. 360-367
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    音声言語という複雑な機能を駆使するヒトでは, 聴覚を介した何らかの喉頭制御機構が存在するものと考えられてきたが, なお証明されるに至っていない.そこで今回著者らはそのような反応系が存在するかどうかについて一連の実験を行った.健常成人に持続発声を指示しつつ, 繰り返し音刺激を加えた.その際, 内喉頭筋より筋電位を導出, 加算処理を行い, 音刺激に対する喉頭の反応について検討した.その結果, 音刺激により内喉頭筋に一定の短潜時を持った反応が認められた.それらの反応は大脳を介さないいわゆる“反射”であろうと考えられた.内喉頭筋での反応は輪状甲状筋に最も早く出現し, ついで右外側輪状披裂筋, 左外側輪状披裂筋の順であった.また, 他の刺激に比し, 音刺激が最も安定した反応を誘発した.
  • 重野 純
    1989 年 30 巻 4 号 p. 368-376
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    言語音と非言語音の知覚には種々の差異がある.3つの純音を継時提示すると, 第2音の高さは時間的に接近した音へ同化的に知覚される (聴覚的タウ効果) .実験1は聴覚的タウ効果について, 言語音 (合成母音) と非言語音 (純音) の場合を比較した.純音では聴覚的タウ効果が認められたが, 合成母音では時間的に接近する音へ対比が生じた.これを「逆タウ効果」と名付けた.カテゴリー判断の習熟度の低い純音の場合は高さについての聴覚的記憶が利用されるのに対して, 習熟度の高い合成母音の場合はカテゴリー的記憶が利用されやすいためと考えた.実験2は3音のカテゴリー関係が日常会話において同・異の場合を調べた.結果は, 母音のカテゴリーが同→異へ連続的に変化すると, 知覚も同化→対比へ連続的に変化した.言語音と非言語音の知覚が異なるのは, 物理的性質の違いよりもむしろ, カテゴリー判断の習熟度などのきき手側の要因によることが示唆された.
  • ―人工内耳の経験から―
    舩坂 宗太郎
    1989 年 30 巻 4 号 p. 377-380
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    The followings ermerged from the study of Japanese speech sound perception of seven patients with Nucleus multichannel cochlear implant. For nonsense monosyllable sounds, the percent recognition in the cochlear implant alone or in lipreading alone did not correlate to that of cochlear implant plus lipreading. For words or sentences, however, the percent recognition in the cochlear implant alone correlated highly with that of the cochlear implant plus lipreading. The auditory and the visual signals provided mutually complementary information for monosyllable sound recognition, whereas the auditory signal provided major information for word or sentence recognition. The role of the visual signal was not only supplemental, but more active in semantic identity for Japanese word and sentence recognition.
  • 廣田 栄子, 田中 美郷
    1989 年 30 巻 4 号 p. 381-388
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    普通小学校に在籍する中・高度感音性聴覚障害児112例を対象として, 自由発話の音声, 発語明瞭度, 語音明瞭度について検討し, 症例の聴力, 幼児期の教育環境, 言語メディアの要因について分折した.その結果, 1) 難聴が高度になると音声の障害の程度が重度になり, 障害の種類が増加した.2) 幼児期にろう学校を経た症例では, 正常児統合例と比べて語音弁別能, 発語明瞭度の障害が顕著であり, 発話速度が低下した.3) 幼児期の言語メディアに手指法を用いた症例では, 聴覚口話法例と比べて韻律的障害が顕著であった.発語明瞭度については, 手指法を用いた例では聴覚口話法を用いた例より, 障害が軽度であった.4) 教育要因の差異が聴覚障害児の音声障害の程度に及ぼす影響は, 聴力レベルの差異がもたらす影響より顕著でなかった.5) 言語力については, 聴力の要因や, 各種教育要因による差異を認めなかった.
  • ―その社会的位置づけ―
    倉内 紀子, 白坂 康俊
    1989 年 30 巻 4 号 p. 389-396
    発行日: 1989/10/25
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
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