音声言語医学
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self-generated cueとしてのジェスチャー
―1失語症例の報告―
藤野 博岩倉 稔子渋谷 直樹
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キーワード: 失語症, ジェスチャー
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1990 年 31 巻 1 号 p. 11-19

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抄録

ジェスチャー能力が良好に保たれた失語症の1症例に対し, ジェスチャーを喚語のためのself-generated cueとすることを目的とした訓練を行い, 音声言語機能の再形成において果すジェスチャーの役割について検討した.語を表出し, それにリズム, タイミングを合わせてジェスチャーを表出する, という訓練を行った結果, 症例は呼称の際, まずジェスチャーを表出し, それをてがかりにして, 喚語するという方略をとることが可能となった.ジェスチャー禁止条件での呼称テストの結果からこの事実がたしかめられた.
呼称時にみられたTOT現象や他の諸行動から, ジェスチャーの運動形式上の特性が喚語における語の音韻形式上の特性の喚起のてがかりとなった可能性が推測された.さらに対象と語の対応関係を再確立するための土台としてのジェスチャーの役割が考察された.

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© 日本音声言語医学会
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