抄録
左大脳半球のブローカ領域ないしその周辺の損傷による特異な構音と韻律の障害を, 発語失行症という.
この障害は, 言語表象の操作機能の障害としての失語症とも, 発声・発語器官の麻痺や筋力低下による麻痺性 (運動障害性) 構音障害とも異なる特殊な構音障害である.
この障害の本態の解明はいまだ十分とはいえないが, その出現率は低くなく, 臨床上, この障害の取り扱いは重要である.
本稿では, 発語失行症の構音障害の特徴, 構音器官の動態などについてのこれまでの研究結果を概括し, 障害像を浮き彫りにするとともに, 評価・診断を中心とした臨床的アプローチについても考察を加える.最後に, 臨床場面での今後の課題について若干私見を述べる.