音声言語医学
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東京都立北養護学校児童生徒の聴力の経年的観察とコミュニケーションの実態について
田中 美郷
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1994 年 35 巻 4 号 p. 359-368

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抄録

本研究は重度脳障害児におけるコミュニケーション障害の原因を明らかにし, これらの子供のコミュニケーションの問題にいかに対処すべきかを探る目的でなされた.対象は東京都立北養護学校生徒児童であり, 年齢は6歳から18歳までに及ぶ.これらの子供には1981年以来毎年1回選別聴力検査を行ってきた.また, 日常生活における教師と子供間のコミュニケーションや, 教師の声, 音楽ならびに環境雑音に対する反応に関する情報を得るために, 本校の教師にアンケートを送り, 152名の生徒児童についての回答を得た.
152名を聴力検査成績に従って, 聴力検査に的確に反応した群 (第一群, 64名) と検査不能群 (第二群, 88名) の2群に分けた.難聴は両側, 片側, および疑いも含めて7名認められた.152名の大部分は精神遅滞を有しており, 特に第二群は重度であった.アンケートについてみると, 第二群では教師の声に対する反応, 言語発達, 口頭によるコミュニケーションや情緒的表現は第一群に比べて著しく乏しかった (統計学的に高度に有意) .それにもかかわらず, 音楽や歌に関しては第二群でもすこぶる反応が良かった.これらの知見は, 音楽は言語獲得不能な重度脳障害児に対しても, 優れたコミュニケーション手段になり得ることを示唆している.

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© 日本音声言語医学会
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