1996 年 37 巻 2 号 p. 196-205
知的障害を有するアテトーゼ型脳性麻痺児の4歳から9歳の5年間の発信面を中心とした訓練経過と発信行動の習得を援助するための働きかけについて報告した.音声発信困難な状態から身振り記号の習得により発信行動の体制が確立した.またこれが図形・絵記号を機能的に使用する基礎となった.図形・絵記号の使用により発信語彙数, 語連鎖表現が拡大し, 文字記号の習得を容易にした.文字記号を媒介に音声発信を獲得した.
包括的な評価に基づき, 個々の症例に適切な補助代替コミュニケーション手段 (AAC) を適用するためには, 記号のモダリティ, 記号形式―指示内容関係の段階, 使用の文脈という観点が重要である.この3つの観点に時間的経過を加えた包括的な発信行動習得モデルを提示し, 発信手段について分類を行った.