音声言語医学
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痙攣性発声障害の新しい評価法: モーラ法
熊田 政信小林 武夫小崎 寛子新美 成二
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1997 年 38 巻 2 号 p. 176-181

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抄録
痙攣性発声障害 (SPD) の評価法として, 障害されたモーラ数を患者の発話文中において数えるモーラ法を提案する.モーラは日本語における“拍”のことで, 日本語発話の音韻的かつ時間的な一つの単位である.したがって, 障害されたモーラ数は, 患者の発話の達成度の客観的な指標になると考えた.発話資料として, 同一の朗読文 (25モーラ) を用いた.対象は, 1991年5月より1994年6月までの間に東京大学付属病院耳鼻咽喉科音声外来を受診しSPDの確定診断をうけた患者で, ボツリヌストキシン声帯筋内注射の初回注射前後の録音資料のある10名であった.結果, 医師による聴覚印象的重症度評価が良いほど障害されたモーラ数 (M) は小さくなる傾向がみられた.また, 注射前との相対評価である患者自身による主観的評価が良いほど, 注射前と比較しMが大きく減少する傾向がみられた.したがって, モーラ法は, 聞き手話し手両者の評価を同時に反映した簡便な評価法として有用であると確認できた.
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