音声言語医学
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言語発達障害における音韻の問題
―読み書き障害の場合―
大石 敬子斎藤 佐和子
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1999 年 40 巻 4 号 p. 378-387

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抄録

知的発達に遅れがなく, 日常会話に問題がないが, 読み書きの発達が特異的に遅れた言語性読み書き障害7例 (小1~6年) に, 音韻, 意味, 構文, 喚語, 記憶の5領域からなる検査バッテリーを作成し, 実施した.結果は, (1) 音韻2課題 (単語逆唱と促音, 長音を含む無意味語のモーラ数かぞえ) の成績が正常コントロール群と比較し劣った. (2) 意味理解課題 (なぞなぞに答える) はコントロール群と差がなかった. (3) 動作語, 物品名, 色名のカテゴリー別呼称で, 動作語, 物品名に比べ, 色名の成績が劣り, コントロール群との差が大きかった. (4) 意味カテゴリーからの語想起に比べ, 音からの語想起の成績が劣る症例が多かった.
以上より, 7症例は言語発達の諸領域に発達の個人内差があり, 音韻の発達が遅れること, 意味理解は良好であること, 呼称機能にカテゴリーによる差があることなどが明らかとなった.読み書き障害と音韻発達の関係は欧米でも指摘されており, 日本語でもその傾向が示唆された.

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© 日本音声言語医学会
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