抄録
構音の評価は臨床的には聴覚印象によってなされている.聴覚評価では複数検査者間の一致度を求め, 高ければ判定に信頼性があるとされるが, 歪み音では一致度が低いことこそ不明瞭さの尺度になるのではないかという議論もある.
側音化構音障害の評価について, 強制選択式の単音聞き書き取りを2度行い結果を比較したところ, 同一サンプルにもかかわらず次のような結果が得られた.a) 一致して聞き分けられる音, b) 一致して聞き誤る音, c) 判定にぶれのある音.
この傾向は評価者間でも評価者内でも認められた.a, bは一致度が高いことに, cは低いことに関係する.一致度が低いことこそ不明瞭さの尺度になるのではないかという議論はcに起因する.この単音聞き書き取りは一致度ではなく正答数で評価することにより, このa, b, cを包括した側音化構音の評価法になることが示唆された.