音声言語医学
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聾の両親をもつ視覚聴覚二重障害・脳梁形成不全児1例の乳幼児期言語・コミュニケーション発達と母子指導の経緯
黒田 生子今村 清志伊藤 泉瀧本 勲
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2002 年 43 巻 4 号 p. 375-385

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抄録

先天的に視覚聴覚の二重障害と脳梁の形成不全を合併し最重度聴覚障害の両親をもつ症例に生後8ヵ月より母子コミュニケーション確立を重視しホームトレーニング指導を実践した.そこで母子コミュニケーションの質的変化と患児の獲得言語の構造的変化の双方について, 母子の障害認識および指導方法との関連から分析と検討を加えた.結果は以下のとおりであった.1) 母子のコミュニケーション確立と補助機器の装用指導には障害認識変化との密接な相互関連性を認めそれらの相補的発達により, ホームトレーニング指導の効果的展開が可能となった.2) 患児は音声言語を中心に健常発達の境界領域程度に獲得し, 副次的に手話・指文字も獲得した.3) 一方, 形式先行で概念形成が不十分な獲得傾向と特に助詞・抽象語の獲得使用の問題を認めた.4) 一定の音声言語獲得に影響した肯定的要因には早期補聴器装用と母親の音声言語力の高さが考えられた.5) 問題要因には特に患児の視覚的動体追視の困難に加え重複障害に起因する心理的怖れから経験の偏りが生じやすかった影響が考えられた.

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