音声言語医学
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小児のbilingual aphasiaの1例
坂本 和哉宇野 彰
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2002 年 43 巻 4 号 p. 391-395

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抄録

bilingual aphasiaにおける報告は成人例が多く, 小児のbilingual aphasiaの報告はほとんどない.もやもや病のSTA-MCA吻合術後, 左大脳後部領域の梗塞により失語症を発症した日本語と英語の二言語併用失語症児の症状および経過を報告する.症例は10歳, 右利きの男児である.3歳11ヵ月時に家族で渡米, 現地学校へ通い4年間過ごした.神経学的には異常を認めなかった.流暢な発話で語性錯語が認められること, 意味理解障害があることからWernicke失語と思われた.本症例の損傷部位と言語症状との対応関係は成人失語症例に見られる対応関係と類似していると思われた.発症1年11ヵ月後に日本語版・英語版WABを実施した.英語においてより重度の失語症状を認めた.このような非平行的回復の要因として, 母語, 習慣性および発症後の言語環境による要因が影響していたと考えられた.

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