音声言語医学
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人工内耳によって発達する聴覚性情動的認知
野中 信之村尾 卓也酒井 俊一中島 誠馬場 朱美西岡 奈美江山口 忍國吉 京子川野 通夫内藤 泰伊藤 壽一
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2003 年 44 巻 1 号 p. 15-22

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抄録

難聴児がことばを獲得するためには相手の人の顔を注視する行動 (注視行動) が必要である.本論文は注視行動の形成と聴覚との関連を検討するため正常な乳児 (事例1) と4歳で人工内耳埋め込み術を受けた重度難聴児 (事例2) が, 相手との関係に気づき (情動的認知) 相手を注視し始める場面をビデオで観察した.その結果, 両例とも自分がしていることに, 相手がことばで反応しているときの言語音声を聞きつけ, 相手を見て相手との関係に気づいていた (聴覚性情動的認知) .そしてその関係を繰り返し試す (対人的循環反応) ことで注視行動を形成し初期の言語を発見していることがわかった.ただし事例2では音入れ前から視覚的に相手との関係を認知し (視覚性情動的認知) , 注視行動が始まっていた.しかしそこに聴覚性情動的認知が加わると対人的循環反応, 注視行動, 言語が急増した.

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© 日本音声言語医学会
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