運動障害性構音障害に対するパラタルリフトの臨床効果の背景に鼻咽腔閉鎖機能の調節様相の変化が含まれるか検討するために, 脳血管障害等による運動障害性構音障害例4例を対象に, 装置完成直後の装着時, 非装着時の口蓋帆挙筋活動を比較した.対象作業として, スピーチサンプル [u] [mu] [pu] [su] [tsu] の各10回の表出, 可及的最強blowingを含む3種の強さのblowingを行わせた.その結果, 非装着時にblowing作業で口腔内圧に相関した口蓋帆挙筋活動が認められたが, 発音作業での筋活動は, 最大筋活動に近い高い領域に分布していた.一方, 装着時の発音作業での筋活動は最大筋活動の50%以下になった.装着により, 口蓋帆挙筋活動の最大筋活動とスピーチで用いられる筋活動との差分である予備能が大きくなり, パラタルリフトは, 運動障害性構音障害例においても, 鼻咽腔閉鎖機能の調節様相を正常化することが示された.