音声言語医学
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注意欠陥多動性障害を合併した人工内耳装用聾児と健聴児の双生児での母子関係の検討
川崎 美香森 寿子藤本 政明
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2005 年 46 巻 2 号 p. 110-118

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抄録

乳幼児の指導を行う際, 母親の心理的安定は訓練効果を高めるうえで重要である.われわれは注意欠陥多動性障害 (attention deficit hyperactivity disorder, 以下ADHD) を合併した人工内耳 (cochlear implant, 以下CI) 装用聾児 (兄, R.H.) と健聴児 (弟) の双生児をもつ母親に, TK式幼児用親子関係検査 (以下TK式) を実施し, 以下の知見を得た.症例R.H.に対するCI術前の母子関係を健聴な弟と比較すると, 術後2年が経過しても変化は見られなかった.術後2年7ヵ月後, R.H.に実施した言語・知能検査が正常となった時点で, 母子関係は兄弟間で類似する結果となった.比較対照群として検討した聴覚障害単一例2例とその兄弟との母子関係では, CI術前は健聴な兄弟に比べ, TK式で問題性が高かったが, CI術後約1年が経過した時点で, 母子関係は安定した.ADHDを合併したR.H.では単一障害例に比し, CI術後母子関係が安定するまでに約3倍の時間を要し, ADHD合併例に対する母親指導の難しさとその重要性が示唆された.

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