音声言語医学
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46 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 森田 智之, 伊藤 裕之, 小泉 千秋, 前田 淳一
    2005 年 46 巻 2 号 p. 105-109
    発行日: 2005/04/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    脳梗塞の再発がないにもかかわらず, 嚥下性肺炎を起こした慢性期脳血管障害者の治療において全身的間接的機能訓練により嚥下障害が改善したので報告する.症例は脳血管障害発症後約5年経過した61歳の男性で, 日常生活動作は自立しており, 歩行能力は屋外自立で車いすを併用していた.口腔や顔面周囲に異常は認めなかった.腹部筋群の筋緊張に低緊張を認め, 端座位や車いす座位のアライメントは骨盤後傾位, 体幹屈曲位, 頸部過伸展位であった.姿勢コントロールを中心とした全身的間接的機能訓練を施行した結果, 骨盤が前後傾中間位で座位が安定した.それに伴って体幹や頸部も屈曲伸展中間位で食事が可能となり, 咽頭食道造影においても嚥下機能の改善を認めた.長期経過のなかで姿勢保持能力が変化したことにより嚥下機能が低下した場合, 全身的間接的機能訓練のみで嚥下機能が改善する可能性が示唆された.
  • 川崎 美香, 森 寿子, 藤本 政明
    2005 年 46 巻 2 号 p. 110-118
    発行日: 2005/04/20
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    乳幼児の指導を行う際, 母親の心理的安定は訓練効果を高めるうえで重要である.われわれは注意欠陥多動性障害 (attention deficit hyperactivity disorder, 以下ADHD) を合併した人工内耳 (cochlear implant, 以下CI) 装用聾児 (兄, R.H.) と健聴児 (弟) の双生児をもつ母親に, TK式幼児用親子関係検査 (以下TK式) を実施し, 以下の知見を得た.症例R.H.に対するCI術前の母子関係を健聴な弟と比較すると, 術後2年が経過しても変化は見られなかった.術後2年7ヵ月後, R.H.に実施した言語・知能検査が正常となった時点で, 母子関係は兄弟間で類似する結果となった.比較対照群として検討した聴覚障害単一例2例とその兄弟との母子関係では, CI術前は健聴な兄弟に比べ, TK式で問題性が高かったが, CI術後約1年が経過した時点で, 母子関係は安定した.ADHDを合併したR.H.では単一障害例に比し, CI術後母子関係が安定するまでに約3倍の時間を要し, ADHD合併例に対する母親指導の難しさとその重要性が示唆された.
  • ―ロンバール効果を用いた発声訓練―
    高橋 信雄, 佐々木 結花, 高野 智恵子, 高橋 博達, 永渕 正昭
    2005 年 46 巻 2 号 p. 119-125
    発行日: 2005/04/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    筆者らの提案によるウエイトノイズ法 (ロンバール効果を用いた音声治療法) を, 一側性喉頭麻痺による音声障害例に適用した.本症例はMRIにて小脳と疑核を含む脳幹部に梗塞巣が認められた.右上下肢の麻痺, 左上下肢の失調等の運動機能障害が認められ, プッシング法の適用は不可能であった.また易疲労性のため努力発声も困難であった.ウエイトノイズ法開始までの3ヵ月間, 音声の改善は見られなかった.55dBのウエイトノイズを負荷して訓練を開始し, 音声の改善に合わせてノイズの音量を小さくした.5ヵ月の訓練で音声の改善が見られ, 音声によるコミュニケーションも改善が見られた.声門閉鎖不全, 声量低下, 粗〓性, 気息性, 無力性声質が残存したが, 音声外科的処置は適用しなかった.ウエイトノイズ法は一側性喉頭麻痺例の音声訓練法として効果的である可能性が示唆された.また運動機能障害を伴う症例にも適用が容易で不快感も少ないと考えた.
  • Emad Badran, Masako Notoya, Toshiaki Tsukatani, Mitsuru Furukawa
    2005 年 46 巻 2 号 p. 126-135
    発行日: 2005/04/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    Speech and language training for deaf children is carried out at our clinic by the Kanazawa Method, an integrated approach consisting of reception and production training in sign language along with auditory/oral language and written language training. In the present investigation we analyzed the long-term effects of training by the Kanazawa Method on the fundamental frequencies (F0) of a group of 40 hearing-impaired subjects who were enrolled in our program before entering elementary school. Speech samples were collected and acoustic analysis was performed for all the study subjects as well as for a group of normal control subjects. The results obtained were as follows. (i) Hearing-impaired male and female subjects trained by the Kanazawa Method showed long-term improvement in voice quality as manifested by a gradual and steady decline in the absolute and mean values of their fundamental frequencies in parallel with age advancement. (ii) Hearing-impaired subjects of both genders who started training by the Kanazawa Method earlier in infancy showed better long-term improvement in fundamental frequencies compared to those who started training at a later age.
    These results point at a considerable potential for training by the Kanazawa Method to produce long-term improvement in the voice quality of hearing-impaired children. Our data also suggest that the earlier a hearing-impaired child starts training by the Kanazawa Method, the better his chance for long-term acquisition of a near normal value of fundamental frequency.
  • 西尾 正輝, 新美 成二
    2005 年 46 巻 2 号 p. 136-144
    発行日: 2005/04/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    健常発話者男女各187例, 計374例を対象として, 青年期以降の加齢に伴う話声位の変化について検討し, 主に以下の結果を得た.
    1.男性では60歳代までは変化は乏しく, 70歳代以降に多少の上昇が認められた.
    2.女性では20歳代と比較して30歳代および40歳代でも明らかな低値を認め, 80歳代まですべての年代群で加齢に伴い低下する傾向が認められた.
    3.男性と比較して女性のほうが, 変化の範囲が著しく大きかった.
    また, 男女両群の年齢群ごとの話声位の正常範囲 (平均±1.96SD) を得たが, これは臨床的に話声位の異常やその原因となっている喉頭疾患の検出に有用であると思われた.
  • 林 安紀子
    2005 年 46 巻 2 号 p. 145-147
    発行日: 2005/04/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    乳児期の音声知覚発達について, 最近の動向を概観した.特に, 音声の分節化知覚の発達について焦点をあてた.人の声が意味を担う言語記号として理解されるためには, 連続的で話者や発話状況によって変動の大きい音響信号を, 有限個の音韻の連鎖として範畴的に知覚できること, さらにそれらの系列である形態素や語のまとまりとして分節化して知覚できることが前提となる.これらの知覚の手掛かりは, グローバルな音声特徴から, より微細な音声特徴へと増えていき, より精緻化されていく.
  • 田中 裕美子
    2005 年 46 巻 2 号 p. 148-154
    発行日: 2005/04/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    近年, 米国では読み書き障害など高次レベルの言語の問題のために学習につまずいているものを言語学習障害 (language-based learning disabilities: LLD) と捉えて言語聴覚士が対応するようになっている.研究1で日本語のLLDのプロフィールを明らかにするために5症例と健常児 (50名) の課題成績を対比させたところ, (1) 読み書きの問題はかなのdecodingに顕著に現れ, (2) 背景要因のうち色名呼称速度や語想起よりは音韻意識などで健常児との差が大きく, 音韻能力障害を示唆した.研究2ではかなdecodingを評価するスクリーニングテストを通常学級在籍の2年生80名に実施したところ, ディスレキシア1名を含む4名 (5%) がLLDと判断された.ただ, 4名の読みの問題が多様であり読み書きの評価や指導の検討には音韻のみならず他の言語面や情報処理速度といった認知面についても考慮する必要がある.
  • 角田 晃一
    2005 年 46 巻 2 号 p. 155-160
    発行日: 2005/04/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
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