抄録
超高齢者社会を迎え,大腿骨骨折の患者は増加してきている.高齢者の大腿骨骨折は自宅での転倒などの軽微な損傷で容易におこる.一旦大腿骨骨折が生じるとADLが低下し,たちまち口腔内環境は悪化する.大腿骨骨折患者の術後におこる合併症として最も多いのが肺炎である.そこで,われわれは70歳以上の大腿骨骨折患者165人を対象に周術期専門的口腔ケアの効用につき検討した.
周術期専門的口腔ケアを行った群(介入群)79例と行わなかった群(非介入群)86例に分類し,手術後1か月間において,各群の術後発熱,3日以上持続する発熱,肺炎の発症,創部感染の有無について調査した.手術後の発熱,3日以上持続する発熱の頻度については非介入群において多かったが有意差は認めなかった.肺炎の発症は介入群1例,非介入群7例に認められ,統計学的に有意に介入群のほうが少なかった.創部感染は非介入群において1例認めたのみであった.
高齢者大腿骨骨折患者の術後肺炎予防に周術期口腔ケアは有用であり,積極的に行っていくべきであると考える.