抄録
ワルファリンカリウム (ワーファリン) 服用中患者の抜歯後に出血や合併症のない画一的な方法はない. そこで福岡大学病院歯科口腔外科で行われている5種類のワーファリン服薬方法下での術後出血や合併症の有無を後ろ向きに調査した. 対象は1996年1月1日より2003年4月30日までの7年4か月間に抜歯したワーファリン服用中患者74例 (継続: 16例, 減量: 11例, 減量から休薬: 4例, 休薬: 35例, ヘパリン変更: 8例) である.
その結果, 抜歯後に重篤な全身的合併症はなかった. 抜歯後出血は, 継続群に16例中1例, 休薬群に35例中3例認めた.
今回の臨床的検討から1回に1歯または数歯の普通抜歯であれば, ワーファリン継続下での止血管理は可能と考えられた. 一方, トロンボテスト値が10%未満の症例, 骨削除が必要な埋伏抜歯や多数歯の一括抜去が必要な症例では, 血栓予防と止血が確実なヘパリン製剤への変更が望ましいと考えられた. また, 外来で抜歯を行う場合は, 後出血や全身的合併症に速やかに対応できる入院体制の配慮が必要と考えられた.