有病者歯科医療
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悪性症候群の既往をもつ向精神薬長期服用患者の全身麻酔経験
斎藤 恒夫西脇 公俊
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2005 年 14 巻 3 号 p. 229-233

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抄録

悪性症候群の既往をもつ向精神薬長期服用患者の全身麻酔管理を経験したので報告する.
患者は48歳の男性で, 統合失調症にて向精神薬を6年間服用中に, 2度にわたる悪性症候群発症の既往があった. 両側の手指の不随意運動, 体幹の背屈, 頸部の後屈を認めたが, 術前に幻覚, 妄想などの精神症状はほとんど出現せず, 日常生活に支障はなかった. 陳旧性両側顎関節前方脱臼に対して両側顎関節形成術が予定された. 術前検査ではとくに異常所見は認められなかった.
プロポフォール100mgとベクロニウム8mgで急速導入後, 経鼻挿管を行い酸素-亜酸化窒素-セボフルランにて麻酔を維持した. 術中, 収縮期血圧98~115mmHg, 拡張期血圧55~70mmHg, 心拍数70~92回/分, 直腸温36.8~37.9℃, パルスオキシメータによる動脈血酸素飽和度 (SpO2) 96~98%の間で変動した. 自発呼吸の出現を確認し, 硫酸アトロピン1.0mg, ネオスチグミン2.5mgを静注した. 純酸素を投与し, 開眼, 四肢の動きを確認した後抜管した. 麻酔時間5時間, 手術時間2時間38分, 出血量64gであった. 帰室後, 血圧, 心拍数, SpO2, 体温を72時間後まで4時間毎にモニターした. 悪性症候群の発症, 合併症を引き起こすことなく管理し得た.

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