有病者歯科医療
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14 巻, 3 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 室谷 暁子, 深田 健治, 内山 博人, 丸岡 靖史, 桑澤 隆補, 扇内 秀樹
    2005 年 14 巻 3 号 p. 175-181
    発行日: 2005/12/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    内頸動脈狭窄症は脳梗塞や一過性脳虚血発作の原因となり得る疾患であり, 近年, 欧米だけでなく本邦においても増加傾向にある.
    今回われわれは65歳, 男性で抗凝固療法中の高度内頸動脈狭窄症患者に発症した軟口蓋癌の治療を経験した. 術中術後の止血困難, 低血圧による各臓器の虚血, 新たな脳梗塞などを生じる危険性も高いが, 厳重な全身管理のもとに全身麻酔下で腫瘍切除術を行った. 術後の経過は良好で退院した.
  • 鈴木 円, 坂下 英明, 江田 哲, 須賀 則幸, 鈴木 正二
    2005 年 14 巻 3 号 p. 183-188
    発行日: 2005/12/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎を有する歯性炎症患者の口腔粘膜に限局して生じた帯状庖疹の1例を報告する. 患者は21歳, 男性で発熱と右側頬部の腫脹を主訴に東邦病院歯科口腔外科を受診した. 右側下顎智歯周囲炎に起因した頬部蜂窩織炎の診断にて抗菌薬の点滴静注を開始した. 3日目に右側の硬口蓋および頬粘膜にびらんの出現を認めたが頬部, 耳前部の顔面皮膚には水庖やびらんの形成は認めなかった. 水痘・帯状庖疹ウイルス抗体 (VZV) の検査結果は陰性であったが, 抗ウイルス薬 (アシクロビル) の点滴静注を開始した. 11日目には口腔内の炎症およびびらんは消失し, 退院となった. 退院時のVZV抗体検査では補体結合反応で256倍を示した.
  • 岡田 崇, 二木 寿子, 竹崎 博嗣, 安部 喜八郎
    2005 年 14 巻 3 号 p. 189-199
    発行日: 2005/12/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    2004年のわれわれの報告においてワーファリン®服用患者の後出血の影響要因をロジスティック回帰分析した結果, PT-INR値, 1回抜歯数, ワーファリン®の調節方法が独立変数として選択された. このことから, ワーファリン®服用患者の抜歯にあたっては抗凝固レベルだけでなく, 侵襲程度や創部面積, ワーファリン®の調節方法が後出血に影響することが示唆された.
    この結果を受けて, ワーファリン®服用患者の抜歯後の出血状態をより客観的に評価し, 抜歯後の経過を分析する目的で, 2003年1月から2005年5月までに当科を受診し, 抜歯を要したワーファリン®服用患者 (以下, ワーファリン®服用群) 43名 (男性19名, 女性24名) および出血要因のない患者 (以下, コントロール群) 41名 (男性11名, 女性30名) を対象として, 抜歯前, 抜歯翌日, 抜歯1週間後 (抜糸前) に唾液潜血試験を行い, 結果を (-), (±), (+), (++) の4段階で判定した. その結果, ワーファリン®服用群とコントロール群との間に抜歯翌日, 抜歯1週間後 (抜糸前) で有意差を認めた. さらに, 両群を抜歯部位により, 中間部, 最後方部の2分類して, 唾液潜血試験との関連性を分析した. その結果, ワーファリン®服用群における最後方部の抜歯症例では, 抜歯前と抜歯1週間後 (抜糸前) の判定結果の差 (変動) で有意差を認めた. これらの結果から, ワーファリン®服用患者では, 抜歯後も1週間程度潜血が持続している症例が多く, 再出血を起こしやすい状態にあることが示唆された. また, ワーファリン®服用患者の最後方部での抜歯症例で最も唾液潜血が持続しやすいことから, 抜歯窩の圧迫条件が止血に影響することが示唆された.
    今回の調査より, ワーファリン®服用患者の抜歯後の経過を客観的に把握するために, 潜血試験紙は有効であると思われた. また, ワーファリン®服用患者の抜歯については, 全身的リスクを考慮すると, 可能な限り維持量継続下で行うのが適当であるが, 今後は, 凝固レベル以外の出血要因を適切に診断したうえで, それぞれの抜歯状況に応じた治療計画作成のための基準が必要であると思われた.
  • 名倉 功, 宮田 勝, 岡部 孝一, 高木 純一郎, 坂下 英明
    2005 年 14 巻 3 号 p. 201-205
    発行日: 2005/12/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    頭頸部癌の頸部・肺転移に対する放射線化学療法後に生じたニューモシスチス肺炎の1例を経験したので報告する. ニューモシスチス肺炎は免疫不全状態の患者に生ずる日和見感染症である. 患者は75歳の男性で, 左中咽頭部扁平上皮癌により1997年1月より放射線治療を施行, その後, 数度の再発に対して切除, 放射線療法を行い経過観察中であった. 左側頸部リンパ節転移のため2003年7月7日に入院. 肺転移も認めたが肺は手術の適応がなかった. 7月14日に左側副神経温存下に頸部郭清術を施行した. 術後には放射線療法と同時に2度の化学療法を行った. 2度目の化学療法から1週間後の9月16日より39度台の発熱, 好中球数の減少を認めた. 9月25日の胸部X線写真では間質性陰影を認め, ニューモシスチス肺炎が強く疑われ, 同日よりST合剤およびステロイドの内服を開始, その後, 各数値は急速に改善し10月6日には正常範囲内に回復していた. 以降, 化学療法目的での数回の短期間入院を経て2005年4月3日に永眠した. 最後の入院となるまで自宅療養をしておりADLは保たれていた.
  • 林 清永, 鎌田 孝広, 酒井 洋徳, 成川 純之助, 宮澤 英樹, 栗田 浩, 倉科 憲治
    2005 年 14 巻 3 号 p. 207-212
    発行日: 2005/12/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    われわれは, 左下顎歯肉癌, 右側甲状腺癌の術後に右内頸静脈血栓症を発症した1例を経験した. 患者は66歳男性で, 左下顎歯肉癌 (T2, N0, M0) の治療を目的に当科へ紹介され, 左下顎悪性腫瘍切除術, 左下顎骨辺縁切除術, 甲状腺右葉切除術, 内頸静脈を保存する右頸部郭清術, 左大腿遊離皮弁による口腔内再建術を施行された. 麻酔覚醒直前より無気肺を認め. ICUにて呼吸管理した. 摘出物の病理検査にて, 左顎下リンパ節に転移を認めたため左側全頸部郭清術を予定したが, 右内頸静脈血栓症を認め, 手術を延期して血栓溶解療法を施行した. 血栓消失を確認の上, 左全頸部郭清術を施行した. 術翌日より予防的に11日間抗凝固療法を施行し, 術後放射線照射を63Gy施行し, CDDP+5-FUによる術後化学療法を3クール施行した. 今回経験した1例を内頸静脈血栓症についての考察を交えて報告する.
  • 永合 徹也, 布山 茂美, 秋山 麻美, 藤井 一維, 佐野 公人, 柬理 十三雄
    2005 年 14 巻 3 号 p. 213-216
    発行日: 2005/12/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    患者は87歳の女性, 左側下顎歯肉癌の診断のもと下顎区域切除, 上頸部郭清術およびプレート再建術が全身麻酔下で施行された. 既往歴に, 左側顔面神経麻痺, 甲状腺腫があるが, 特に加療は行われていない.
    前投薬として硫酸アトロピン, ミダゾラムを筋肉投与した. 導入は, 亜酸化窒素, 酸素, ミダゾラムとペンタゾシンを用いたm-NLAで行い, 維持は亜酸化窒素, 酸素, セボフルランで行った. 術中は特に問題なく経過し, 手術時間7時間25分で無事予定処置を終了し, 麻酔からの覚醒は順調であった.
    帰室約3時間後, 多弁, 多動等の不穏状態を呈したので, ミダゾラム5 mgを筋肉投与し良好な鎮静が得られた. しかし, 帰室後約7時間が経過した時点で, 創部の浮腫および出血が原因と考えられる気道閉塞により, 自発呼吸不能となった. 直ちに気管切開を行い, 自発呼吸は再開したが, その後, 再び体動などの不穏状態を呈し始めた. ミダゾラムを4回 (計10mg) 追加投与したが良好な鎮静状態は得られず, 自発呼吸不能に伴う脳の低酸素状態による障害を考慮し, サイアミラールナトリウムの微量点滴投与約2mg/minを開始した. 約18時間継続し, 計2000mgを投与した. その間, 良好なコントロール状態のもとに, 投与中止後約9時間で意識清明となり, その後, 何ら特記すべき症状は認められなかった. サイアミラールナトリウムの脳保護作用は, 他に類をみない特長であり, 今回はその特長を含め, 術後鎮静における本剤の有用性を再認識した症例であった.
  • 前田 亮, 矢郷 香, 岡田 豊, 中川 種昭, 朝波 惣一郎
    2005 年 14 巻 3 号 p. 217-222
    発行日: 2005/12/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    特発性血小板減少性紫斑病 (以下ITP) は, 血小板に対する自己抗体が出現し血小板減少をきたす疾患である. そのため, ITPを合併した患者の口腔外科手術に際しては, 周術期の止血管理が重要である.
    今回われわれは, 特発性血小板減少性紫斑病を合併した72歳, 女性の頬部血管腫を経験したのでその概要について報告する.
    患者の血小板数は術前29,000/μlと低下していたので, 術前にγ-グロブリンの大量療法 (400 mg/kg/日) を4日間施行した. 手術当日の血小板数は85,000/μlまで増加した. 手術後, 後出血もなく経過良好で, われわれはITPを合併した患者の手術を安全に遂行することができた.
    ITP患者の口腔外科手術の際, 術前に迅速に血小板数の増加を計るためには, γ-グロブリン大量療法はとても有効な方法であると思われた.
  • 伊藤 耕, 濱田 良樹, 鈴木 麻美, 斉藤 知之, 瀬戸 皖一, 近藤 壽郎
    2005 年 14 巻 3 号 p. 223-227
    発行日: 2005/12/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    歯性炎症が合併した急性肝炎の1例を経験した. 本例の患者は二名の歯科医師と一名の内科医師を受診していたが, 倦怠感や, 発熱などの全身症状は, 歯性感染による症状と判断された. そのために, 発症していた急性肝炎の発見が遅れる結果となっていた.
  • 斎藤 恒夫, 西脇 公俊
    2005 年 14 巻 3 号 p. 229-233
    発行日: 2005/12/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    悪性症候群の既往をもつ向精神薬長期服用患者の全身麻酔管理を経験したので報告する.
    患者は48歳の男性で, 統合失調症にて向精神薬を6年間服用中に, 2度にわたる悪性症候群発症の既往があった. 両側の手指の不随意運動, 体幹の背屈, 頸部の後屈を認めたが, 術前に幻覚, 妄想などの精神症状はほとんど出現せず, 日常生活に支障はなかった. 陳旧性両側顎関節前方脱臼に対して両側顎関節形成術が予定された. 術前検査ではとくに異常所見は認められなかった.
    プロポフォール100mgとベクロニウム8mgで急速導入後, 経鼻挿管を行い酸素-亜酸化窒素-セボフルランにて麻酔を維持した. 術中, 収縮期血圧98~115mmHg, 拡張期血圧55~70mmHg, 心拍数70~92回/分, 直腸温36.8~37.9℃, パルスオキシメータによる動脈血酸素飽和度 (SpO2) 96~98%の間で変動した. 自発呼吸の出現を確認し, 硫酸アトロピン1.0mg, ネオスチグミン2.5mgを静注した. 純酸素を投与し, 開眼, 四肢の動きを確認した後抜管した. 麻酔時間5時間, 手術時間2時間38分, 出血量64gであった. 帰室後, 血圧, 心拍数, SpO2, 体温を72時間後まで4時間毎にモニターした. 悪性症候群の発症, 合併症を引き起こすことなく管理し得た.
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